●幼児期の重要性(2008年3月)
卒園と同時に、ワクワクドキドキの新年度が始まります。
でも、新入園児を持つ保護者のみなさんは心配なことが多くなっていませんか。
さて、今回はある園で書かせて頂いた記事より、幼児教育の重要性です。
特に新入園児の保護者にはじっくりお読み頂きたいと思います!
 この仕事に就いてから19年間で、北は稚内から、南は宮古島、ついでにアメリカまで約1300箇所以上の幼稚園・保育園・幼児教育施設に実際に足を運ばせて頂きました。そこでは、子供に体育指導をしたり、園職員や保護者の方々には、研修会や講演会をしてきました。非常に珍しい仕事である為、詳しい説明は控えますが・・・。最初は体操指導だけでしたが、色々回っているうちに数ある教育現場の中で最も大切なのは幼児教育ではないか? という事を、専門書や教科書ではなく、子供たちの姿から学びました。
 狼に育てられたアマラとカマラの話を聞いたことがあると思います。生まれてから約8年間狼に育てられたカマラは、助けられた後、人間としての教育を施されたそうですが、色々な事が出来なかったということです(話すこと、二足歩行など)。果たして、今我々大人が同じように狼の群れと共に生活をしたとしたら、四足になったり人間の言葉を忘れたりするでしょうか? 答えはもちろんNOです。つまり、人間は特に未完成の状態で生まれてその後数年間環境の影響を大きく受けて成長ているということなのです(例えば私たちは日本語の環境で育ったおかげでいつの間にか日本語を自由自在に話し、二足歩行さえ、わずか1年ちょっとで習得してしまいます)。実は、この短い話しの中にいわゆる幼児期の重要性のヒントがたくさん含まれていますので、それを今から出来るだけシンプルに分かりやすくお伝えしていこうとおもいます。
 幼稚園には3歳で入園します。この3歳から6歳までに運動神経を操る小脳が90%出来上がることは今や常識になっています。もう少し簡単に言うと、幼児期に出来たことはその仕組みのおかげで一生出来るようになっているのです。
 幼児期に出来なかった場合は、(学童期になってからできるようになることが絶対無理とは言いませんが)かなりの努力が必要です。更に素晴らしいことは、この時期ならばみんな出来るようになるということです。
 保護者の中には、自分が運動を苦手だと、自分の子供も苦手と決めつけてしまう人がいます。私は、運動神経は遺伝するものではないと勝手に思っています。つまりどういうことかと言いますと、多くの人が勘違いしてしまうのは、運動神経ではなく環境が遺伝してしまったということなのです。前述したカマラのように狼に育てられれば子供は四足で歩きます。毎日車で送迎していれば、歩くことが苦手になってしまったりします。
 このように子供たちも色々な環境で3歳まで育てられ幼稚園に入園してきます。もちろんすでに運動が得意な子、苦手な子がいます。しかし、ここからがスタートなのです。この幼児期に良い運動神経を作るには、あそび感覚という最高の方法があります。例えば、かけっこ。子供は練習とはだれも考えません。あくまでも遊びです。勝っても負けてもやっぱり遊びです。この遊び感覚を利用できる幼児期なら、だれでも運動が大好きになり、結果を確実に出すことが出来ます。
 運動が出来るようになると間違いなく自信をつけます。この自信が大切なのです!!
そして、この出来る! という結果を得るために、人間には学習能力があります。
 「何故、人間は歩くのか?」答えは「人間だから?」違います。アマラとカマラは人間です。しかし歩けなかったと言われています。それは大切な運動神経が出来る時期に狼の歩き方を学習してしまったからです。
 つまり、周りが歩いているから、それをまねして歩き出す。これが、人間が持っている素晴らしい学習能力(自分で学ぶ力)です。しかしその学習能力は教えれば教えるほど逆に進化せず、いつしか周りが自分に教えてくれるのを待つようになってしまうものなのです。そうさせずに学習能力を最大限に引き出す方法が、自学自習です。自ら学び自ら理解する。これが3歳から9歳位までに非常に発達するのです。

 「体の力」運動神経は6歳まで。そして、「学ぶ力」3歳から9歳位まで。が非常に重要です。どちらも幼児期であればこそ、だれでも遊び感覚でこの、「体の力」「学ぶ力」が身につきます。
 子供にとって最初の集団の環境が幼稚園です。この環境でその後の将来が変わると言っても過言ではありません。
 子供には無限の可能性があります。そして、幼児期だけはその可能性を確実に可能に出来る大切な時期です。
 大切な幼児期です。一日一日を大切にしていきましょう。


前の記事 ← ● → 次の記事
はっちゃんまん
 園と保護者と、園児の味方。
 北海道から沖縄まで全国の幼稚園・保育園を指導している。
1年間に飛行機に乗る回数は120回を超えるほど、日本中を移動。そんな中で「日記」を書いてくれています。
 理不尽なことが大嫌い。普段は「背広モード」か「体操モード」で元気で優しいが、あまりに理不尽なコトがあると「ファイヤーモード」に変身するらしい。
バックナンバーはこちら
著作紹介
BOOK03
『必読! 私立園で働く主任・学年主任のためのスタディブック』
八田哲夫著
¥1500(税込)
BOOK01
『教えて!
保育者に求められる100の常識』
八田哲夫・長屋あゆみ[共著]
¥1000(税込)
BOOK02
『実践! 新人・若手保育者の
ためのトラブル・シューティング集』
八田哲夫・溝上健二[共著]
¥1000(税込)

購入希望はPDFダウンロード後ファックスにて注文してください。
注文用PDF・532KB