●ROOM No.10(2008年3月)
「大人になったのび太少年」 木全公彦・林公一著 宝島社文庫
 この本は「あの人は今・・・」のいわゆる漫画版です。表題の「のび太」以外にも、「まことちゃん(まことちゃん)」、「サファイヤ(リボンの騎士)」、「鏡アッコ(ひみつのアッコちゃん)」、「早乙女愛(愛と誠)」、「キャンディ(キャンディ・キャンディ)」、「星飛雄馬(巨人の星)」など、そうそうたるメンバーが顔を揃えています。
 そして、このキャラクターたちを、その特徴的な行動から精神分析し、数パターンの「このまま大人になったとしたらきっとこうなる!」と言う内容の本です。
 最初は軽い気持ちで(娯楽本のつもりで)読み始めましたが、読みすすめていくうちに、現代の子供像にぴったり当てはまる部分もあり、これは娯楽本どころか、立派な育児書じゃないか! と真剣に読んでしまいました。
 ご存知のとおり、子供は成功体験よりも、むしろ失敗体験から多くを学びます。
 「かわいい子には旅をさせろ」と言われるのはそのためですが、ドラえもんはのび太の貴重な失敗体験からくる学習チャンスを、ことごとく奪ってしまっているというのです。そんなのび太は「将来は引きこもってしまう……」 という予測をされていました。
 「言われてみればなるほどそうだ」と一人合点してしまいましたが、私たちも自分の子供が1人でできることを手伝ったりしていたとしたら……。「ドラえも〜ん」とすぐに頼ってしまうのび太のように、依頼心の強い子供になってしまうかもしれませんね。
 しかし一方では、ドラえもんの四次元ポケットから飛び出してくる魅力的なツールが、のび太の脳(前頭葉)を大いに刺激して、想像力および創造力が非常に発達し、「将来はとてもクリエイティブな職業に就き大成功する」例えばビル・ゲイツのように……という予測もありました。これはこれで最初は意外に感じましたが、やはり「ありえなくもない」と思います。
 いずれにしても、子供時代の環境や体験というものは人生にとても大きな影響をあたえます。のび太の場合でも、全く違う2つの可能性が予想されています。
 このことを「子供には無限の可能性がある」というありふれた結論で片付けてしまってよいものか、それとものび太がドラえもんと出会った年齢が10歳であったことから、10歳までにどのようにのび太が育てられていたか(自分の頭で物事を考える習慣とでもいいましょうか)によって、その後同じ環境を与えても全く別の育ち方をするという、「発達臨界期」的な考えをすればよいのかという2つの考え方があります。私は迷わず後者をとりたいと思いますが……。
 このように漫画やTVで観ている分には微笑ましいだけの『ドラえもん』という作品も、奥の深い読み方ができるものなのですね。興味がある人は是非読んでみてください。みぞけんまんのお奨めです。


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みぞけんまん
 みなさん、こんにちは! みぞけんまんです。
 このコーナーは、多くの対象の方(子供に関係する方全て)に気軽に読んでいただこうと思いまして、あれこれと考えた結果、特に親しみやすい「映画」や「本」などを切り口にしながら、あくまでアメリカンに、シュガー&ミルクたっぷり?にお伝えし、「全ての道は私立園に通ず」を実証していこうとするものです。
 みなさん、どんどん遊びに来てください! このページを通して、仕事中だけでなくプライベートな時間にも「ラフに」、しかしながら「常に」、子供たちのこと、保護者のことが考えられるような感性を身につけられたら(学べたら)、どんなにすばらしいことでしょう。そんな学びの部屋へご招待します。
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ためのトラブル・シューティング集』
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