●ROOM No.17(2008年10月)
「99のなみだ 涙がこころを癒す短編小説集」
「99のなみだ・雨 涙がこころを癒す短編小説集」
 かつて、これほど一気に読んだ本があっただろうか?
 それは、深夜の本屋でふと手にした、全てが「家族の愛情」というテーマで貫かれた、2冊の短編集でした。タイトルは「99のなみだ」。帯には「最後に思い切り泣いたのはいつだろう?」「子どものように泣いてもいいんだよ」と書いてありました。そのコピーに惹かれてほとんど衝動的に購入し、そのまま自宅で朝4時頃までかけて2冊を読み終わりました。読み終わった後、涙で滲んだ目でしばらく呆然として暗い天井を見つめました。そこにはまるで家族とは? という根源的な問いに対する答えが、スクリーンに映し出された映画のクライマックスシーンのようにフラッシュバックしていました。
 DV・児童虐待・シングルマザー・高齢者対応・相続・家庭内暴力・離婚率の増加・子供を生まないことを選択する夫婦。日本の家族が抱える様々な問題から、日本の「家族崩壊」が叫ばれています。だからと言って、私はライフスタイルの多様化に伴って家族観が大きく変化してきたこの現代において、どんな家族が「理想的な家族」であるかを議論し、一つの答えを引っ張り出そうとするのは不毛だと思っていました。しかし、この本はその様々な答えの中から、ろ過紙で抽出したような一滴の真実を教えてくれました。
 それは、あたかも、箱の中にバラバラのブロックだけを詰め込み、何万回ゆすって、何度箱のふたを開けてみたところで、たくさんのブロックが偶然に理想の形に組み立てられていたりしないのと同じように、家族というコミュニティをしっかりと結びつけるためには、絶対に「人の手」が必要だということでした。
 言い換えると「努力」。そう、家族の構成者一人ひとりによる「良い家族になろうとする努力」でした。「危篤の母がかつて娘のために願ったこと」「貧しい親子のひたむきなお互いの思いやり」「余命短い妻が語る夫への想い」「幼くして逝った息子が母親に残した15枚の七夕の短冊」……。妻が、夫が、息子が、娘が、祖父が、祖母が、継母が……。それらは全てそんな人たちの、涙ぐましいほどの「家族」にたいする努力です。
 この秋、鼻の奥をツンとさせたい人から、久しぶりに人目をはばからず号泣してみたい人まで、一押しの2冊。読み終わった後は、あなたにとって「理想の家族」を作るために、自分にどんな努力ができるのかが、きっと見つかるでしょう。

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みぞけんまん
 みなさん、こんにちは! みぞけんまんです。
 このコーナーは、多くの対象の方(子供に関係する方全て)に気軽に読んでいただこうと思いまして、あれこれと考えた結果、特に親しみやすい「映画」や「本」などを切り口にしながら、あくまでアメリカンに、シュガー&ミルクたっぷり?にお伝えし、「全ての道は私立園に通ず」を実証していこうとするものです。
 みなさん、どんどん遊びに来てください! このページを通して、仕事中だけでなくプライベートな時間にも「ラフに」、しかしながら「常に」、子供たちのこと、保護者のことが考えられるような感性を身につけられたら(学べたら)、どんなにすばらしいことでしょう。そんな学びの部屋へご招待します。
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著作紹介
BOOK02
『実践! 新人・若手保育者の
ためのトラブル・シューティング集』
八田哲夫・溝上健二[共著]
¥1000(税込)

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