●ROOM No.30(2009年11月)
「風が強く吹いている」
 ここ数ヶ月、この部屋では映画ばかり観ていましたので、今月訪れていただいた皆さまには久しぶりに素晴らしい本を1つ紹介するとしましょう。それは、三浦しおんの「風が強く吹いている」です。
 箱根駅伝を走りたい――という一念で、一度は走ることをあきらめた一人の男「灰二(はいじ)」とその男の前に突然現れた天才ランナー「走(かける)」、そしてその他は全くの陸上競技素人たち10名が、な、なんと、あの箱根駅伝出場を目指す物語です。
 専門に陸上競技をやっていた人なら、どれだけファンタジーなストーリー設定なんだ? と思うでしょう。実は私も思いました。思いましたが、気がつけば最後まで一気に読み終わっていました。「ありえない」が「たぶんありえない」になり「ありえないんじゃないかな?」に変わり、「いや、あるかもしれない」になった頃には最後の頁を閉じていました。
 実は私も高校3年間+大学4年間、陸上競技部長距離ブロックに身を置いていました。だからこそ作品中にとても共感できる名セリフがありました。
 灰二「長距離選手に対する一番の誉め言葉ってなんだと思う?」
 走 「速い…… じゃないんですか?」
 灰二「オレは…… 強い、だと思う」

 自己記録だけ速くて、勝負になると最後に競り負けてしまう選手がよくいます。つまり強いと誉められる選手とは、自己記録はそれほどではなくても、いざという勝負に強い選手のことを言います。
 野球で言うと、結構打率はいいのに、ここ一番のチャンスに凡退してしまう…… そんな意味です。
 私立園の先生でも、保育知識や保育技術をたくさんもっていることと「良い先生」は必ずしも一致しないのと同じ感じです。
 この本には「本当の強さとは何か」を知ることのできる物語が登場人物たちのエピソードとともに、本当にたくさん語られています。
 さあ、皆さんもこの本のページを開きながら「幼稚園・保育園の先生に対する一番の誉め言葉ってなんだと思う?」「子育てをしている親にとって一番の誉め言葉ってなんだと思う?」そんな問いに対する答えを見つけていただけることを心から願っています。

※この小説は映画化され2009年10月31日に封切られましたので、ぜひ観に行ってください。そして、正月には箱根駅伝も観戦しに行ってほしいと思います。(TVもいいですが、できれば沿道に!体中から感動が噴出してくること間違いなし!です)

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みぞけんまん
 みなさん、こんにちは! みぞけんまんです。
 このコーナーは、多くの対象の方(子供に関係する方全て)に気軽に読んでいただこうと思いまして、あれこれと考えた結果、特に親しみやすい「映画」や「本」などを切り口にしながら、あくまでアメリカンに、シュガー&ミルクたっぷり?にお伝えし、「全ての道は私立園に通ず」を実証していこうとするものです。
 みなさん、どんどん遊びに来てください! このページを通して、仕事中だけでなくプライベートな時間にも「ラフに」、しかしながら「常に」、子供たちのこと、保護者のことが考えられるような感性を身につけられたら(学べたら)、どんなにすばらしいことでしょう。そんな学びの部屋へご招待します。
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著作紹介
BOOK02
『実践! 新人・若手保育者の
ためのトラブル・シューティング集』
八田哲夫・溝上健二[共著]
¥1000(税込)

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